あじわう入試英語1
1980年京都大1より抜粋
社会の構成員として役割を果たしたいと思うなら,次の2つの危険を避けなくてはならない,という文章に続いて次の部分がきます.まずは自力で文構造を解析してみましょう
知っていなくてはならない表現
on the one hand などが見えたら,the other やothers のようなものが存在することがほとんどです.これらを探しながら読みます.
what SV 「SVであること」「何がSVであるか」この形は名詞節となりますので,文の構成部分としては,主語にも目的語にも補語にもなります.今回は前置詞about の目的語になっています.どちらの意味が適切であるかは文脈に依存しますし,どっちでもいいことの方が多いように感じます.
take it for granted that SV 「SVを当然のこととみなす」他に take A for granted 「Aを当然のこととみなす」などもあります.
not (〜) in the least 「全く〜ない」否定を強調する表現です.
indulge in〜 「〜に耽る」
文構造は大体次のようなものになります.
昔の京大は,なんだか説教くさいというか,簡単なことを難しく言って煙に巻くような文章が多かったような気がします.しかし,構造が複雑な文章が多く(今回のものはそれほどでもないのですが),あまり英語に慣れていない受験生であればパズル的要素を楽しむことができました.最近のものの方が文構造自体はシンプルですが,内容も分量もしっかりしていると思います.
今回のものは,考えなしに行動に突っ走ってしまいがちな若者に対する年寄りのおせっかいみたいな文章です.大学に進学するような若者にはもう一つ,学究生活にはまって仙人のような思考回路を持つ人もいるので,そのような若者に対しても警告をしています.まあ,大きなお世話ですな.
文の構造としては,there is the danger of rushing into action without thinking or by taking it for granted が骨格になっています.without thinking とby taking it for granted の部分がいずれもrushing into action を修飾していることに気づくことが第一のポイントです.また,although 節がtaking it for の部分に対する従属節となっていることを掴むことが二つ目のポイントです.ハイフンで囲まれている部分は補足説明です.カンマで囲まれている部分も一般には補足説明であることが多く,ざっと読むだけなら,そして何が書いてあるかよくわからなければテキトーに飛ばして読めばいいでしょう.
日本語にするのはなかなか難しいのですが,上記の例ぐらいで十分でしょう.ちなみに,ほんの十年くらい前までは,京大の入試英語は和訳と英訳だけでした.東大入試英語が英語を英語として読むことと,情報処理能力を試しているのに対し,京大入試英語は,あくまでも英語を題材に取りながら,日本語と英語の直接的な対峙を迫るものであったと思います.日本語に比重を置いた英語の試験であったと言って良いでしょう.他の大学の入試問題は,東大と京大の間に位置します.最近は東大寄りの大学が増えているように感じます.