物理参考書・問題集紹介
欧米の大学の教科書は丁寧に書かれているので、実は勉強しやすかったりします。レベル的には日本の高校と大学一年生の間くらいで、英語自体もシンプルであるため,日本の高校生なら(旧帝大程度を志望しており、ある程度意欲と向上心があれば)十分に読み進めることが可能です。
物理は、微積やベクトルをある程度きっちり学んでからでないときちんとした学習ができず,有害ですらあります。したがって、お薦め参考書はすべてこれらの数学的道具を使っているものばかりです。「サルでもわかる」みたいなタイトルにつられて、安直な道を選ぶことのないようにしていただきたいものです。微積やベクトルなどの数学を用いずに物理や化学をやることは、漢字が読めない人に森鴎外を読ませるようなもので、論外であり、学問に対する冒涜以外の何物でもありません。また、数学で学んだことを物理や化学で使えば、数学の理解も深まります。理科に数学の結果を使わせないという指導要領の方針は、誰がなんと言おうと完全に的を外した深刻で罪深い間違いです。
また,盛岡の高校では,三角比やベクトルや微積分を学ぶ前の高校一年生段階で物理を履修することになっているようですが,これは自分で先のことを勉強している生徒さん以外には絶対にまずい方法です.三角比やベクトルや微積分をまだ知らない高校一年生は,一年生でやる物理はテキトーに流しておくことを強くお勧めします.変な癖がついてしまうと,きちんと勉強し直す時の邪魔になります.以下に紹介する本は,すべて高校レベルの数学をある程度学んだ人のためのものです.数学を知らずにこれらの本を手に取っても,多分よくわからないと思います.
中学レベル
特にありません。中学校レベルの理科は単なる暗記と、お話レベルの理解だけで十分です。
高校レベル
新・物理入門(山本義隆著 駿台)
非常に真剣に書かれた、素晴らしい参考書です。しかし、「本物」の例に漏れず、普通の(覚悟のない)高校生や受験生が一人で読み切るのは困難なようです。向上心のある友人と議論しながら読むか、指導者に質問して適切な助言をもらいながら読めば、物理についての最上級の基礎が身につくことでしょう。
理論物理への道標(上下)(杉山忠男 河合塾)
上記の本と同じくらいのレベルで、もう少し語り口はまろやかです。Amazon のレビューには、この本が問題集であると書いてるものもありますが(確かに、例題は載っています)、これは参考書として丁寧に読み込むべき本です。ちなみに、Amazon のレビューは、参考書や問題集に関する限り、ほとんど役に立たないということを頭に入れておく必要があります。レビューを書いているのが、ど素人の中高生であることを考えれば当然と言えます。
はじめて学ぶ物理学(上下)(吉田弘幸 日本評論社)
上記2冊と同じ傾向の本で,行間が広いので読みやすいかもしれません.最初の方にテイラー展開の公式が載っていたりするのでビビるかもしれませんが,それを積極的に使っているわけではなく,気にせず先に進めば良いと思います.ただ,三角比,ベクトル,微分積分(内容と計算がわかる程度でOK.ただし,三角関数と指数関数の微積分は自由にできるくらいに訓練しておかないとまずい.これは前2著についても同じこと)がわかっていることは大前提です.ここまでの3冊は読者に最低限の数学的能力を要求しています.それがないとそもそも物理をまともに学ぶことができないからです.数学と物理を結びつけて理解することを絶対に拒否したい,という人はおそらく物理は向いていないので,生物を選択した方がいいです.
物理教室(河合塾物理科)
上記三冊が難しくてダメ、という人にお薦めします。これがギリギリ妥協できるラインです。
理系標準問題集物理(駿台)
解答の質がまちまちで,独習という観点からするとおすすめする,とまではいかないのですが,問題の選定自体は必要十分という感じです.高3の夏休み前までにどの問題でも一瞬でアプローチがわかる,という状態にしておくことが物理選択の受験生の義務です.石原学舎では,意欲のある高2生に対して,この本を使って(もちろん基礎事項の解説もしています)講義演習をしています.
体系物理(教学社)
赤本の会社なので大したことないと思っていたのですが,結構いいです.基礎事項の導出問題もついているので,基礎の確認にも役立つことでしょう.
ファインマン物理学(岩波書店 1~5)
ファインマンがカリフォルニア工科大学の新入生を相手に、物理の入門的講義をしたときの講義録です。邦訳ですと、1~3くらいで学力的には十分お釣りがくるでしょう。どこを読んでも斬新で、生き生きとしています。英語がある程度できる人は、原書で読んでもいいでしょう。塾長は浪人時代これで物理を学びました。あの時のワクワク感は今でも思い出せます。数学のレベルは初等的なので、高校生でも十分ついて行けます。あとほんの少し数学的に高級なことがやりたければ、下にある「基幹講座物理学シリーズ」がよいでしょう。
基幹講座物理学シリーズ(東京図書)
京大の新入生向けの教科書です。今のところ、力学と解析力学と電磁気学と熱力学と量子力学と相対論が出ています。学生時代にこの教科書があったら、と思います。力学・解析力学・電磁気学に関しては素晴らしく明快で分かりやすいまとめになっています。ちなみに、この参考書の中の具体例が、京大の入試問題のネタと全く同じで、しかも近似の扱いも同じでした。恐らく著者が出題したのでしょう。数は少ないですが、演習問題とその解答もついており、本文の内容を確認するのに使えます。
番外編
ダメな参考書
色々あるのですが、盛岡の高校で買わされることの多い「物理のエッセンス(河合塾)」シリーズは最悪のゴミ参考書です。真面目に学んだことのある人が選ぶとは思えないような参考書で、これを買わせる先生方の見識を疑います。どこがどうダメなのかは、上記の参考書や教科書を読んだ人にはすぐにわかりますが、初心者にはそのダメさ加減を説明できません。何も知らない高校生に強制的に買わせるのは犯罪だと思います。