THE UNCONSOLED
Kazuo Ishiguro "THE UNCONSOLED" 読了
一体何ヶ月かかって読み終えたことであろう.500ページ以上というのがめちゃくちゃ長いというのは確かなのであるが,それ以上に読み進めるのが苦痛であったとしか言いようがない.
高名なピアニストである「私」が,何かの芸術イベントのためにどこかの,おそらくは東欧の地方都市を訪れるところから話が始まる.しかし,「私」はそのイベントで何をするのかを何も知らされておらず(忘れているだけのこともある),次々に現れる人々とのよくわからないトラブルに巻き込まれ,それが解決する前に別のトラブルに巻き込まれる,ということが500ページずっと繰り返される.語り手は自分がどこにいるのかわかっておらず,場合によっては時間も把握していない.五十センチ先が見えない霧の中か暗い部屋の中にいるような状態で前進しつつ,どんどん周りの状況が変わっていくという,なんとも気持ちの悪い話である(別にホラーとかではない).話のどこにも盛り上がりとかはなく,とにかく全てが淡々と進んでゆく.語り手の前に現れる人々は,人の話を全く聞かず,しかし大変饒舌で,そして語り手自身も他人の事情には全く関心がなく,大変イライラする.そして,場面転換の仕方がなんだか「不思議の国のアリス」によく似ていて,もしかしたら500ページを使って夢オチか,と思ったらそうでもなかったという,なんとも奇妙なお話であった.あと,不条理感というか意味不明なところが,ドリフのコントっぽいようにも思える.んが,所々笑えるところもあるとはいえ,大部分において読むのが苦痛であったことは否定できぬ.
なんだかんだで,今作を読了したことでKazuo Ishiguro の小説作品は全て読破した.ちょっとだけえっへんという顔をしたい.