世界99
村田沙耶香「世界99」読了
初めて読む著者の本だ。ラロロリン人という遺伝子操作された人間と、ピョコルンというこれまた遺伝子操作でつくられた人工生命がいる以外は、ほぼ現代日本と同じ設定である。SF的な設定に見えるけど、人間の性(「さが」と「せい」の両方)を徹底的に暴露するような書き方がなされている。
主人公の空子は自称からっぽで、常に空気を読みつつ世界を渡り歩くタイプの女性である。世界①は地元の友達との世界、世界②はハイソな友人たちとの世界、世界③は意識高い系の友人たちとの世界、みたいな感じ。空子氏はそれぞれの世界で、人格を変えて生きてゆくんだが、という風に話は進んでゆく。世界99というのは、自分たちが世界を渡り歩いているのであるという自覚のある人々の生きている世界、ということらしい。
設定はこんな感じでライトなんだが、テーマ自体はいじめ・搾取・暴力・差別などを露悪的にずらーっと並べていて、最初から最後まで緊張感があった。読み終わって帯のところを見たら(塾長は帯とかあらすじなんかは読む前に見ないようにしている。カバーをかけているのはそのため。本屋で本をとるときも、表紙の絵しか見ないようにしてるし、カバーをかけるときも帯とか裏表紙とか見ないように気をつけてる)、ディストピア小説ということだった。ふむ。これがディストピア小説ということだと、1984のようなディストピアとはちょっと違う。1984においては社会体制は最初から最後までずっと変わらない。本書においてはディストピアの原因が社会体制ではなく、人間と人間の総体である社会の他者世界への侵略として描かれており、さらにその性質も時とともに変わっていく。1984においては、ビッグブラザーを打ち倒せば何か変わるかもしれないと思えるが、本書の世界においては(そして現実世界においても)、他者とかかわる限りディストピアであることは変わらない。
正直言って読後感は最悪だけど、がんばって読んだぞって感じ。頭の悪い登場人物しか出てこないお話はきつい。


