京大的アホがなぜ必要か
酒井敏「京大的アホがなぜ必要か」読了
京大の総合人間(旧教養部)で長く教えてきた教授による,大学危機論(というか日本社会危機論).前半ではカオスとかスケールフリーの話をして,それを現代日本の大学や日本社会の状況に当てはめて議論している.めっちゃ大雑把にいうと,世の中にはアホ部分と真面目部分があって,それらが敵対しつつ共存して世の中が進歩してきたのに,最近の政治家や官僚や社長さんたちは真面目部分だけで世の中や人々や社会をコントロールしようとして日本と日本の大学が機能不全に陥っている,て話.真面目部分の典型が「選択と集中」で,確かに預言者でもない我々は,どの方向に投資すればうまくいくかなんてわからんわけで,誰が一体どんな根拠で選択して集中投資するねん,とは思う.正直なところ,カオスとかスケールフリーの話は単なるアナロジー以上のものではないように見えるので,話半分くらいで読んでおけば十分であろ.
ただ,確かに昔に比べて色々と他人の思想や行動を制限したがる人々が多くなったような印象はあって,世の中で流行っている「多様性」てのは一体何やねん,という気がしてはいる.多様性てのは,「多様性なんてクソ喰らえ」と思ってる人々をも許容して共存していくということだと塾長は解釈しているのだが,多様性を謳ってる人々にそのような感覚はあるんだろうか.
