月は無慈悲な夜の女王
R.ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」読了
タイトルだけ見ると,SF小説というよりはSM小説なのではないかと思ってしまうが,この作品はオールタイムベストと言ってもいいくらいの傑作SFであるらしい.別に女王様は出てこない.
時は2075年,人類は月面進出を果たして数十年経っているという設定.月面は終身刑を言い渡された囚人たちとその子孫,および行政府の役人たち(地球でいうと看守みたいな)が住んでいる流刑地として使われている.主人公のマヌエルは,コンピュータ技師で,月世界の計算機の保守をしている.彼はある時,中央コンピュータが自意識を持つようになったことに気づき,彼(マイク)と会話を始める.彼らの交流は極秘のうちに進み,それが月社会および母星である地球との関係にどのような影響を及ぼすか,というお話.
AIがネタにはなっているが,基本的な問題意識は政治形態であったり家族形態であったりの人間側の話で進んでゆく.AI独自の価値観というものがどういうふうになりそうかということに関しては特に目新しいものはない.人間と共感を持つようになる,というようなことになるはずがないので,そこらへんは物足りないかも.
