Einstein : HIS LIFE AND UNIVERSE

W. Isaacson "Einstein: HIS LIFE AND UNIVERSE" 読了

ずいぶん昔にkindle で購入して,その後読まずに放置していたアインシュタインの伝記をようやく読み終えた.エアロバイクを漕いでいる数十分を半年くらい続けた感じ.そもそも,エアロバイクを漕ぐたびに毎回読むわけでもないし,最初のうちは,いつまで経っても大学生にならなくて,人生が前進している感じがなかった.んが,相対論(特殊も一般も)がうまくいったあたりからは話が先に進みやすくなって,おっさんになると時の流れが速くなるのと同じかいな,と思いながら読んでいた.

うちの本棚にはもう一冊,まだ読んでないアインシュタインの伝記があって,そちらはアインシュタイン晩年の同僚であるパイスによるものであるからか,どちらかというと科学的業績の方に重点があるように見える(十年以上前に,最初の30ページくらいを読んだ印象だけど).今回読んだ方は,プライベートな話題も科学的業績と同じか,それ以上に描かれていて,なかなかゴシップネタに事欠かない感じだった.例えば,アインシュタインの子供は男子2名というのが公の話であるが,実は一人目の妻と結婚する前に女の子が一人いて,その子は妻の実家だか親戚の家に行ってそのまま行方不明(子供を養子として譲ったのか,別の事情があったのかはわからないようだ.)になっていて,アインシュタインも当時の妻もそのことについては一切話をしておらず,完全にいなかったことにされているらしいこととか,一人目の妻との離婚騒動では,別れてくれたらノーベル賞の賞金を全額やるから別れてくれと迫ったとか,奥さんがいる時も,いない時も,女遊びは派手で,家族関係的にはなかなかのクソ親父であったとか.

晩年は平和運動に勤しんでいたようで,政治家や知識人からは「科学的業績は圧倒的であるが,世辞に疎い」,CIAだかFBIだかからは(誤って)「ボリシェヴィキと関係がある」「左派である」とみなされていたようだ.ただ,政治家の連中が理性を持った決断をしないことが世界平和の邪魔になっているという信念は全くその通りだと思う.それは彼が死んで70年たった今でも全く変わらない.塾長は,人間が政治に長く携わるのは本質的に害悪だと思っている.例えば,全ての国において例外なく貴族や議員は在任五年で処刑,王族や総理大臣や閣僚は在任一年で処刑,とかにすればもう少し世の中は良くなるのではないだろうか.

結構強烈だったのが,彼の死後脳が取り出された話.アインシュタインの脳がスライスされて保存されている,という話はきいたことがあった.人類史を代表する天才であるから,そのような措置が取られることももちろんあるだろうと思っていた.しかし,実際はアインシュタインの検死をしたプリンストン病院の医師が,自分で勝手に脳味噌を取り出し,遺族の抗議を無視して脳をスライスし,特に何も考えずに色んな(ランダムに選んだとしか思えない)研究者にそのスライスを送り,そのうちの一部は自分で保管していたということだ.そして,保存状態が悪かったため,アインシュタインのDNAを取り出すことはできず,大して意味のある研究もなされなかったという,なんともとほほな結果になっている.SNSが発達した現代でこんなことが起きたら,一瞬で拡散されて医師生命と社会的生命にトドメが刺されたことであろう.

以下引用

Blind respect for authority is the greatest enemy of truth.

truthの部分には世界平和を入れても良いし,人類の進歩を入れてもよかろう.

I treat my wife as an employee whom I cannot fire. I have my own bedroom and avoid being alone with her.

離婚を争っている時の発言.すごいねえ.奥さんと絶対に二人きりになりたくなかったんだ.

He celebrated by buying a new violin.

一般相対論を完成させて,自分へのご褒美に新しいヴァイオリンを購入したんだと.なんか素晴らしい.

On one of the many occasions when Einstein declared that God would not play dice, it was Bohr who countered with the famous rejoinder: Einstein, stop telling God what to do!

神はサイコロを振らない(量子力学によると,物理学の基礎法則は確率に支配されていて,何が観測されるかはランダムにしか決まらないことになっている.しかしアインシュタインは,この宇宙は確率に支配されておらず,何が観測されるかは,こちらの知識が十分であれば,はっきりと決まっていると考えていた.)とアインシュタインは何度も言っていたが,あるときボーアが次のような有名なカウンターを喰らわせた「アインシュタイン,神に何をすべきか命令をしてはいけないよ」

Life is like riding a bicycle. To keep your balance you must keep moving.

サメみたいだな.

It seems to me an utterly futile task to prescribe rules and limitations for the conduct of war. War is not a game: hence one cannot wage war by rules as one would in playing games.

これ,戦争法というものがあるのを知った中学生の頃から,ずっと変だと思ってた.だって,殺し合いしてるのに捕虜に人道的扱いをしろとか,非戦闘員を攻撃するなとか,意味わからんよ.戦闘員,非戦闘員問わず,敵を皆殺しにするのが戦争の目的でしょ.

At the end of the 1940s, when it was becoming clear to him that the effort to control nuclear weaponry would fail, Einstein was asked what the next war would look like. " I do not know how the Third World War will be fought," he answered, "but I can tell you what they will use in the Forth --- rocks."

現在の世界政治を動かしている連中が全く理解していないと思われるのがこれ.終末的な戦争が起きたら,これまでに人類が築いてきた科学的知識,芸術的成果がすべてゼロに戻る可能性があるのだ.我々知的(ほんまか?)生命体の究極目標は,我々が何者であるのか,ここがどこであるのかを探究することであり(それが現在の科学の枠組みで行われるものであるのかはわからない),それを邪魔するいかなる試みも禁ずるべきだと考えている.だから,塾長は為政者の定期的な更迭または処刑が必要であると考えている.

The trouble with Oppenheimer is that he loves a woman who doesn't love him --- the United States government.

マンハッタン計画(原爆製造計画)のトップであったオッペンハイマーが赤狩りで公職追放の憂き目にあった時の話.

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