英語の歴史から考える英文法の「なぜ」2

前著「英語の歴史から考える英文法の『なぜ』」の第2弾.ちなみに,1冊目は中学生の生徒さんが借りていってしまった.もう少し英文法の知識がついてから読むともっと面白くなると思う.

前著が,古英語から現代英語までの英文法の変遷と歴史的状況の解説を主にしていたのに対し,今作は黒人英語やアイルランド英語などのいわゆる「非標準英語」の解説に焦点を当てている.最近少しずつ読み進めている「ハックルベリーフィンの冒険」からの引用も多く,ハックやジムの使っている英語にも,ある種一貫した文法があるというのがわかって興味深い.著者によれば,標準的な英語と非標準的な英語は英語の双子のようなもので,どちらもちゃんとした英語なのだということらしい.

ちなみに,黒人英語などの非標準英語が小説に現れると,塾長の脳味噌はパズルモードになる.例えば,次のような英語を見るとちょっと楽しい.引用は「風と共に去りぬ」からで,スカーレットおつきの黒人メイドの発話から.スカーレットに惚れてる双子の野郎どもをスカーレットがあしらって帰らせた後で,メイドが説教をする場面.

Is de gempmum gone? Hucome you din' ast dem ter stay fer supper, Miss Scarlett? Ah done tole Poke ter lay two extry plates fer dem. Whar's yo' manners?

暗号みたいでしょ.ハックルベリーフィンの冒険で少し慣れているので,塾長はほぼ解読できたが,extry だけわからなかった.答えを知ってしまえばそりゃそうだ,となるがなかなかの暗号化であるとは思わぬか?

標準英語だと,これが以下のようになる.

Are the gentlemen gone? How come you didn't ask them to stay for supper, Miss Scarlett? I have told Poke to lay two extra plates for them . Where're your manners?

extry はextra だったのね.

それにしても,ブラウザのスペルチェックが入っていて,上に書いた黒人英語の文章が赤だらけになっている.いやはや.

英語で小説を読んだり,映画を見て楽しめるようになるには,こういう知識もある程度必要なのかもしれない.もちろん,全然知らなくても塾長のようにパズル的に解読していくことはある程度可能だとは思う.ただ,映画とかラジオドラマだとゆっくり考える時間がないからきつい.

標準的でない英語がこれだけたくさんあり,しかも地域や人種グループによっては広く使われているとなると,「正しい」英語というのがなんなのか確信を持って言うことが難しい.うちで英語を教える時も「小説とかだとこうじゃないこともあるんだけどね」と毎回言い訳しながらやってる.まあ,受験英語(≒標準英語)のような比較的閉じた世界であっても,我々外国人が隅々まで歩き回ることは難しいんだけど.

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