数学参考書・問題集紹介

数学は日本社会の中である程度の社会的地位?を獲得したようで、一般書・専門書ともに質の高い本が多くあり、他の分野から見ると羨ましい限りです。ここではそのごく一部を紹介します。今後適宜増やしてゆく予定です。

中高生〜一般向け

虚数の情緒(吉田武著 東海大学出版会)

「中学生からの全方位独学法」という副題からもわかるように、中学生をターゲットにした総合的な数学書です。難しい漢字も躊躇なく使われており、漢字を学ぶこともできます。数学と理科、そして歴史的なことも紹介されている、まさに全方位と呼ぶにふさわしい内容です。塾長が子供の頃にこんな本があったら夢中で読んだろうに、と思わせる充実した記述です。

この本の著者には他に「オイラーの贈り物」「素数夜曲」などの名著もあります。意欲的な中高生には、知的好奇心を刺激してくれる楽しい読書になることでしょう。

中学レベル

体系数学シリーズ(数研出版)

中高一貫校用の教科書です。中学生範囲については問題集も市販されており(高校生範囲については市販されていませんが,アマゾンやメルカリでぼったくり転売屋から入手可能です)、分量とクオリティを考えると公立高校の入試対策としてはこれ以上のものは考えにくいです。教科書の方は、指導要領とは異なる配列になっていて、記述に一貫性があります。章末問題の難易度は、学校で渡される教科書のものよりも若干高めです。まあ、この程度が普通なのです。

月刊誌「高校への数学」(東京出版)

難しい問題や、ちょっと面白い考え方に興味のある、背伸びしたいお子さん用です。この出版社から出ている他の数学の本も、良いものがあります。本屋さんで色々眺めてみましょう。

高校レベル

Focus Gold(啓林館)

一高で買わされる参考書や問題集の中で、唯一ちゃんとした参考書がこれです。塾長が高校生の頃にあった「大学への数学(研文書院)」通称「黒大数」をさらに発展させたようなハイクオリティな本です。例題については何度も繰り返して、いつ見てもできるようにしておく必要があります。この部分は解法の引き出しであり、そのような解法を採る必然性について反省をするところです。東大京大を狙う場合はさらに進んで、ひらめきをある程度必要とするような初見問題にたくさん当たらなくてはなりませんが、まずは引き出しを確実に増やし、確実に開くようにしなくてはなりません。塾長の見る限り、限りなく百パーセントに近い一高生が、この段階にすら達していません。つまり、スタートラインに立つ前に受験しちゃってるってことです。リスクが高いですね。

月刊誌「大学への数学」(東京出版)

言わずと知れた、数学好きな中高生のための雑誌。「学力コンテスト」「宿題」だけをやるのもよし、自分のレベルにあった演習コーナーにコツコツ取り組むもよし、読者コーナーに載ることだけを喜びにするもよし、何れにしても一ヶ月で端から端まで味わい尽くすのは困難です。ハマりすぎて他の科目をおろそかにして失敗する受験生が昔から一定数いました。そうならないほうがいいとは思います。が、幸せは人それぞれですから。

大学初年級レベル

加藤文元 大学教養「微分積分」「線形代数」

理系の大学生がまず最初に学ぶ数学がこの2つです.塾長が学生の頃は「解析概論」とか「解析入門」みたいなのか(これらは今読んでも名著だと思います),サルでもわかる微積分みたいな学生を馬鹿にしたような本しかありませんでした.ここに挙げた2冊は,厳密な証明がきちんと述べられている上に,昔の教科書なら「これくらいわかるでしょ」と省略されていた,話の流れや動機づけみたいなことも説明されていて,書き方がより親切であると言えます.チャート式の参考書も同時に発売されているようなので,数学科に行くような学生さんでなければ,演習量もそれで足りるでしょう.もちろん,ちょっと背伸びしたい,あるいは高校数学における極限や連続性の扱いが出鱈目で気持ち悪い,という中高生にも手を出しやすい教科書だと思います.

大学〜一般向け

The Princeton companion to Mathematics

数学辞典のようなものですが,日本数学会から出版されているような,数学科の学生か専門家しか読まない(読めない)ものとは毛色が異なります.現代を代表する超一流の数学者たちが,高校生〜大学学部生程度の数学の知識を持った数学好きを相手に,数学史のようなお話から,かなり専門的な内容まで噛み砕いて解説しています(もちろん,章によってはどこを読んでも難しいところもあります).記事によっては参考文献も紹介されているので,数学科や物理学科の学生さんが興味を持ったら図書館で探したり,購入したりすることもできます.第4章以外は一つ一つの記事は高々1ページとか2ページで,理数系に興味のある高校生が,多読の練習として活用することも可能です.というか,塾長が高校生の頃にこの本があったなら間違いなくそれをやっていたことでしょう.現代の中高生は素晴らしい本たちに囲まれていて羨ましい限りです.邦訳もあります.でも,中高生や大学生なら英語の練習にもなるし,邦訳よりは少し安いし,原書を購入した方がいいと思います.

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