山の日
中学生の頃まで,石原家ではこの時期に家族旅行に行っていた.ものすごく小さい頃は母方祖父の故郷の近くの飯山とか斑尾高原みたいなところに行っていた.小学校に上がってからは,蓼科とか女神湖のあたり行くことが多かったように思う.よくわからんが,泊まりがけで海に行った記憶はなく,基本的には山だった.塾長も海より山の方が好きだ.というか,日陰も植物もほとんどない砂浜的な場所が嫌いというべきか.
山には行ったが,山に登った記憶は2回くらいしかない.親父には山登りにこだわりがあったらしく,曰く「体力のある奴が一番後ろを歩け.体力のない奴に合わせろ」「ちゃんと靴を履け」「長袖を持ってゆけ」「一人でも疲れたらすぐにやめて引き返す」「上りよりも下りがしんどいから,下りの体力がなさそうなら途中で引き返す」みたいなことをしつこく言われた.あるとき,結構調子良く歩いていたら,妹が疲れたと言い始めた.奴は疲れたのではなく,飽きただけであると塾長は知っている.塾長より体力があるのだ.でも,親父は引き返すと決定した.頑固クソ親父め,と呪ったものだ.
しかし,最近年寄りが山で遭難したというニュースを見るたびに,親父のことを思い出す.ああ,こういうことなのだ.登山というのは,大文字山や高尾山程度の丘であっても,リスクを伴う活動なのである.チェロを弾いていて遭難することは絶対ないが,登山なら割と簡単に死ねる.ということを,いい年していて分別を持っているべき大人や年寄りが理解していないのが致命的だ.老害と言われたくなければ,最低限の知性と理性を持っていなくてはなるまい.