Quantum Mechanics The theoretical Minimum

Leonard Susskind " Quantum Mechanics" 読了

生徒さんの旅行のお土産でもらった本で,弦理論やホログラフィック原理などで有名なSussukind の講義録.講義録といっても,単位を必要とする学生のための正規の講義ではなく,向学心に燃えたエンジニアたち(Susskind はStanford の教授で,Stanford 近辺は当然のことながらバリバリのIT企業に勤めてる人々がいるわけだ)が仕事帰りに受講するようなものである.ブルーバックスよりはレベルが上で,大学の物理学科でやるような量子力学の講義ほど細かいことはやっていない,という感じ.微積分と線形代数と初歩的な複素関数を知らないと多分無理.旅行のお土産で量子論の本とか,なかなかとがった生徒さんだ.面白かったので,古典力学と,特殊相対論の本も買ってしまった.

題材の配列はシッフやJJサクライやメシアのような昔の教科書をなぞったものではなく,Nielsen&Chuangや清水量子論やPeres などに好みが近いものになっている.位置表示のシュレディンガー方程式は最後の2章にしか出てこず,最初の2/3はひたすら量子もつれの解説を目指して最短距離を進んでいる.第1章で,量子論における観測結果の論理が古典論理(高校や大学の(数理論理学を専攻する人々が学ぶ非古典論理でない)数学や理科で学ぶような論理)ではないことが示されて最初からびっくりする.量子論と古典論の違いはいろいろあって,例えば,エネルギー準位や角運動量などの量子化・不確定性原理・トンネル効果など,昔の教科書では結構重点的に扱われたものと,量子もつれや量子測定理論・量子情報・量子計算のような,21世紀になってから物理学科以外の人々が量子論を学ぶ動機になったものがあるが,この本は後者に力点を置いている.最初の半分くらいはNielsenの教科書の量子論の解説の一部を,丁寧な計算で追ったようなものになっている.

この講義自体,YouTubeとかで公開されていて,そこそこ人が集まっているのが見える.仕事帰りのサラリーマンがこのレベルの講義を楽しんでいるというのが羨ましい.数学とかだと東京ならこのようなことをやっている集団があるはずだが,物理だとどうなんだろう.盛岡のような地方都市でこのような試みをしている人はいるのだろうか.

それにしても外国の出版社の製本技術はひどく,この本も謎の乱丁落丁がある.このページの水色の帯が一体どういう理由で存在するのかが全くわからない.製造工程にこんなものが紛れ込むものなのか.
これはもっとすごい.どうやったらこんな製本になるのだろうか.ちなみに出版社はPenguinで,普通に大手だよ.

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