夜と朝のあいだの旅
ラフィク・シャミ「夜と朝のあいだの旅」読了
名前も初めて知った著者で,どのような経歴の人かも知らない.図書館だとこういう初見の小説家の本も気楽に借りられるからありがたい.
1990年代前半のドイツで,妻に先立たれた60がらみのサーカス団団長がある日1通の手紙を受け取るところから話が始まる.差出人はウラニアに住む団長の幼馴染で,たっぷりの報酬を出すからお前のサーカス団をウラニアに派遣してくれ,という内容の手紙だった…
ウラニアがどこなのかわかんなくて調べてみたが,どうやら実在の街ではないらしい.ブラジルに同名の地方があるようだが,本書でのウラニアは中東にある.おそらく,著者の出身地であるシリアがモデルなんではないかと勝手に推測している.主人公と幼馴染がどっちもじいさんであるというのもあって,派手ではない,というか物騒な話があっても「そんなこともあるよね」と思ってしまう.ほんのりとした希望の光を感じるお話であった.


