City

アレッサンドロ・バリッコ「City」読了

10歳か11歳の天才少年グールドと,ひょんなことでグールドの家政婦となったシャツィを中心として話が進んでゆく.全体的に支離滅裂で,イメージとしては彼ら以外の世界が予定調和を保って動き続ける歯車とすると,彼ら二人はそれらとはうまく噛み合わない独立した歯車で,偶然彼らの歯車同士が微妙に噛み合ったことで(実際にはあまり噛み合っていない)物語が少しだけ進む,という感じ.そして,彼ら自身の物語と並行して,グールドの語るボクサーの物語と,シャツィの語るウェスタンが語られてゆく.ただ,これらの作中作品と彼らの物語の間に必ずしも明確な切れ目が入っていないため,最初のうちはかなり頭が混乱した.

物語があちこちにとび,語り手が変わることもあるため,初めに書いたように支離滅裂であるという印象はあるのだが,グールドとシャツィの語る物語がそれぞれ(その物語の中では)説得力があって面白く,グールドとシャツィ自身の物語も,彼らや彼らの周りの人々との会話がほとんど噛み合っていないにも関わらず奇妙な現実感があって面白い.そして,会話の中に含蓄のありそうなことがあちこちに散りばめられている.なんだか不思議な読後感を持ったのであった.

ちなみに,グールドのボクサー物語もシャツィのウェスタンも,どことなくヘミングウェイを思わせる雰囲気を持っている.

図書館の外国文学の棚からテキトーに引っこ抜いてきた.字が小さくないというのが選んだ理由.

Follow me!