SOPHIE'S WORLD
J.GORDER "SOPHIE'S WORLD" 読了
20年くらい前にベストセラーになった,子供向けの哲学入門.塾長は新しい物好き,流行り物好きなので,ベストセラーになっていた当時,駒場の生協に平積みされていたこの本を何も考えずに入手してしまった.そして特に哲学に興味があったわけでもないので,最初の数ページを読んだだけで放置し,結局今まで読まずに本棚の肥やしにしてしまったのであった.500ページ以上ある結構分厚い本であるが,子供向けということもあって大変読みやすい.高校で学ぶはずの基本的な文法事項と,ある程度の単語力があれば,高校生でも楽しんで読めることであろう.字が小さいのは仕方がない.文庫本やペーパーバックに字の大きさを期待することはできぬ.
お話は15歳の誕生日を目前にしたソフィーの元に,見知らぬ哲学者から哲学入門コースの通信講座を受講しないか,と手紙が届くところから始まる.ああ,胡散臭い.その後,ソフィーとその哲学者アルベルトは手紙のやり取りと実際の対面講義で哲学史の勉強を始めてゆくが,そのうちヒルデという別の女の子とその父親の存在が彼らの生活に影響を及ぼすようになり…さてどうなるでしょう.
哲学史の部分は,中高の社会の教科書よりは詳しく,「哲学入門」的なタイトルがついている文庫や新書よりはあっさりしている.ちょっと気になった哲学者については,石原学舎にある(読んだことのない)哲学の本でちょっとだけ補充した.なぜかフロイトも記述の中にあり,フロイトを哲学者・精神科医ではなく占い師とか占星術師に分類していた塾長としてはちょっと驚きだった.フロイトの「精神分析入門」「夢判断」はどちらも学生時代の寝る前の愛読書の一つだった(他に「ツァラトゥストラ」「臨済録」なども愛読書だった).久しぶりに「夢判断」をちょっと読んでみて,あまりの字の小ささに3ページで挫折した.精神疾患の原因の全てを性的欲求不満に求めるという,なんかすごく魅力的というか,無茶苦茶な仮説理論で,B級小説としてならともかく,まともな文学者や研究者がいまだに彼の研究をしている理由がよくわからない.
で,哲学入門の部分は面白く読めたのであるが,ソフィーとヒルデの世界の関係については分かったようなわからんような.今流行りの世界間を移動するような話にも見えるし,なんか別の含みがあるのかもしれん.
しばらくは短編集を読んで,そのあとはJ.Irving の辞書みたいに分厚い最新作か,あるいはPais の書いたEinstein の伝記あたりに行こう.