The Beginning of Infinity
D.Deutsch "The Beginning of Infinity" 読了
量子計算の礎を築いた物理学者の一人である,Deutschの科学エッセイである.科学的な考え方とはどういうものか(かれは「啓蒙精神」というような言葉を使っている)を,様々な例を挙げつつ詳細に語っている.表題にあるinfinity「無限」には色々な種類や階層が含まれており,その中でも特に,教義的な頭の使い方をやめて批判的かつ理性的な説明をするという活動が(これが科学のこと),より良い説明を求めて無限に続いてゆく,という点を強調している.Deutsch は啓蒙精神を獲得した人類について,非常に楽観的な姿勢を持っているようだ.「問題はいつでも現れる.問題はいつでも解決可能である」ということもあちこちに書かれているが,塾長が生まれてからの数十年を考えても,確かにそうかもしれないと思わされる.
この本を購入したのはコロナ禍よりも前で,時々思い出したように読み始めては,すぐやめる,ということを繰り返していた.結局数年越しでなんとか最後まで到達したが,よくわからない議論もあってちょっと凹んでいる.一般向けの科学エッセイでこれほど読むのに苦労した本は他にない.まだまだ修行が足らぬな.