気候文明史
田家康「気候文明史」読了
気候の変化が文明世界にどのような影響を与えてきたのか,という視点で歴史を見直す話.面白そうな視点であると思って入手したのであるが,本の前半は延々と数万年前から数千年前の,時代の名前を聞いてもわからん(というか,まだ文明と言えるほどのものはない)昔の話.過去の地層を調べることで昔の気候を調べ,それを説明する海流や気流についてのモデルの紹介する,といった感じ.ようやく塾長でも知ってるシュメール人とかローマ人みたいな話が出てきたのが,半分くらい進んでから.とにかく前半は苦痛であった.
数万年前からの比較をすると,海水位とか湖の水位が100メートル単位で上下するとか,氷河の南端が氷期においては現在よりも数千キロレベルでずれてるとか,結構怖い.そして,社会が今ほど大きくなかった時代においては,火山の噴火やそれに伴う気温の降下によって農作物が不作になることが,文明崩壊の引き金になってきたというのもなるほどという感じだ.もともと,生物の絶滅事象というのは,氷河期を乗り切れるかということにかかっていたわけだから,当たり前といえば当たり前か.ここ150年くらいの間,地球上の気候は極めて変化が少なく,しかも温暖であった.今後もそうであることはない.
そう考えると,地球温暖化に対する対策は当然やりつつ,寒冷化した時の準備もしなくてはならないことになる.むしろ我々がすべきなのは,大規模なテラフォーミング技術の開発なのであろう.二酸化炭素排出抑制のような小さなことではなく,例えば金星や火星を居住可能な惑星にするための技術にこそ本気で取り組むべきなのではないか.
内容とは関係ないが,この本は校正がまともになされていない.著者自身が日本語に堪能でないということもあろうが,あるべき接続詞がないために話の流れが不連続になってしまったり,単純な誤植と思われるものがあちらこちらに見られたり,読んでいて腹がたつ.昔に比べると出版される本の分量が恐ろしく増えたが,その中にはこの本や大部分のラノベと呼ばれる本たちのように,編集者が全く何の仕事もしていない,子供の作文みたいなものが多く含まれるようになった.自費出版とかではなく,一応プロの出版社が出している本にそのようなものがたくさんあるというのは一体どういうことなんだろう.