鏡の中の鏡
ミヒャエル・エンデ「鏡の中の鏡」読了
最初から最後まで薄暗い夢の中の世界をうろついているような気分にさせられる,30の連作短編集.「はてしない物語」のようなワクワク系ファンタジーではなく,不条理な世界が延々と続く.それぞれの短編によく似た登場人物や設定が持ち込まれることもあり(特に,隣り合った短編にはその傾向があるように感じる),同一人物の長い夢のようだ.ただ,局所的には辻褄が合っていたり,何かの仄めかしか隠喩であるかもしれないと思われる発言もあったりして,よくわからない.例えば,ぴんと張ったロープの上で道化が綱渡りする場面などは,ニーチェの「ツァラトゥストラ」冒頭の綱渡りシーン(人間は猿人と超人の間に渡された一本の綱である)を思い起こさせる.
まあ要するに,何が何だかわからんということだ.石原学舎にある本で,これと同じくらい意味不明なのはチャペク「受難像」で,これは借りてった生徒さんはおらんな.