行人
夏目漱石「行人」読了
前半はプー太郎の話,後半は神経質なプー太郎の兄貴の話がメインで,特に後半が辛気臭い.最後は兄貴の友人からの書簡が数十ページにわたり続いたあとで唐突に終わり,一体私は何を読まされてきたんだとがっくりする.有隣堂のYouTubeチャンネルに出てた文学賞主催者側の人が「オチがないというのが純文学の定義です」と発言してたのを思い出してしまった.それにしても投げっぱなしすぎ.
「今の日本の社会は − ことによったら西洋もそうかも知れないけど − 皆な上滑りのお上手ものだけが存在し得るように出来上がっているんだから仕方がない」
百年前から世の中は同じであるということだな.多分もっと昔から,そしてどの地域でも同じなのであろう.
「だから道徳に加勢するものは一時の勝利者には違いないが,永久の敗北者だ.自然に従うものは,一時の敗北者だけれども永久の勝利者だ」
道徳に加勢するというより,道徳を恣意的に決定するもの,と言った方が言葉遣いが正確ではないか.