THE IMITATION GAME
数学者であり計算機科学の生みの親の一人でもあるA. Turing の伝記的映画.Turing は「チューリングマシン」や「チューリングテスト」など文脈で知られていることの方が多いだろうが,この映画は,第二次世界大戦中にドイツ軍が使っていたエニグマ暗号を解読した英国グループの中心人物としてのチューリングを主に描いている.人間関係を潤滑に進める能力が欠けていることや,同性愛者であることを前面に出しているため,彼の成し遂げた功績の半分も描ききれておらず,表面を撫でただけの描写になっているのが少し残念.現代のコンピュータがチューリングマシンそのもの(リソースが有限であることを除いて)であることを考えると,現代の文明生活の大部分が彼の仕事によるものであると言ってもいいのであるが,その点についてはほとんど触れられていない.
戦前戦後あたりの英国において,同性愛が犯罪であり(正確には肉体関係を持つことが犯罪であり),投獄もしくは強制的なホルモン注射が義務付けられていたというのはなかなか衝撃的ではあるが,よく考えてみれば塾長が生まれる頃まで,米国で黒人が白人と同じバスに乗ってはいけないという法律があったわけで,文明国と言われるような国であっても,ちょっと前までは(今の基準で言うと)十分に後進国相当であったのだなあと.そしてその反動かどうか知らんが,最近のLGBT系は色々と騒がしい.流行が変わったのか,それとも過去の自分たちの行いに対する過剰な後ろめたさであるのか.いずれにしても,これらが道徳の問題ではないことは確かだ.
映画のエピローグのところで,逮捕されホルモン注射をされていたチューリングの恩赦が2013年にエリザベス女王によってなされた,というコメントがあったのには笑ってしまった.人類史に燦然と輝く偉業を成した大天才を,ただ血筋が王家に繋がっているだけの婆さんが許すとか,いったいお前は何様だよ,って感じだ.そういえば,ローマ法王がガリレオだかジョルダーノブルーノだかの地動説が正しいと認めて,恩赦だかなんだか言っていたけど,それもまたお前何様だよって言いたい.こうしてみると,いわゆる為政者側の連中というのは,ただただ無能で世の中をスムーズに回すこともできない邪魔者だというのがよくわかる.アホは仕方ないが,アホはアホなりに大人しくしとれよ,と切に願う.