SECOND FOUNDATION
Isaac Asimov "SECOND FOUNDATION" 読了
アシモフの銀河帝国三部作の三作目をとうとう読み終えた.一作目を読み始めて5年近く,途中に長いブランクを挟んだために前作の内容を忘れて全部読み直したりしているうちにこんなに時間がかかってしまった.しかし,全てを読み終えて,心地よい余韻に浸っている.これは傑作と言っていい素晴らしいSF作品だ.
舞台は,栄華を誇る銀河帝国が衰退の道を進み始めるところから始まる.銀河帝国の心理歴史学者Seldon博士は,このままだと銀河帝国が今後3万年間に渡る蛮族の時代に突入してしまうと予測し,それをなんとか1000年に短縮しようと,第1ファウンデーション,第2ファウンデーションという二つの組織を銀河の反対側の端に設立する.第1ファウンデーションの目的は,銀河帝国の科学技術を維持し記録するということになっており,その後百年以上に渡って,統治者は変わりつつも(政治家,商人,宗教団体など)支配地域を銀河辺境から少しずつ増やしてゆく.一作目と二作目は基本的にこの第1ファウンデーション,そして旧銀河帝国の関わりをテーマにしている.
そして,今回読んだ第三作は,これまで全く表舞台に出てこなかった第2ファウンデーションの正体と,それがどこにあるのかについて焦点が当てられる.前二作よりもミステリー要素が多く,後半になると息もつかせぬ展開でめっちゃ楽しい.邦訳も出ているようなので,若い人々にも読んでほしいですわ.
ちなみに,心理歴史学というのは,大衆の行動を統計的に扱うことで,個人の行動は予測不能でもマクロに見ると(モブをトータルで見ると)未来予測が極めて精密にできる,という設定になっており,これは数学の大数の法則,物理でいうと(平衡)統計物理学にでてくるアイデアを借用したのであろうと勝手にに想像している.
それはそうと,この本の出版社Everyman"s Library の本は,欧米出版社のものとしては例外的に製本が素晴らしい.きちんと糸で縫ってから糊付けしているし,糊自体もちゃんとしているし,ハードカバーだし,しかも安い.欧米の出版社の出す本は,クソ高いテキストなんかもしばらく読んでると背表紙から崩壊するような安っぽい作りのものが多くうんざりしているので,こういうちゃんとした(というか,これが普通だろうと思うんだが)製本の本を見るとちょっと嬉しくなる.最近は同じ出版社から出てる,モームの短編集を読んでる.電子書籍で手軽に読むのもいいが,きちんとした製本のガッチリした本をゆっくり読むのもまた楽しい.