オスカーワイルドで学ぶ英文法

倉林秀男・原田範行共著「オスカーワイルドで学ぶ英文法」読了

オスカーワイルドの有名な短編「幸福な王子」の原文を,詳細な文法的解説とともに読み込んでゆくという趣向の本.同じシリーズに,ヘミングウェイやO.ヘンリー,シャーロックホームズがある.オスカーワイルドの原文を読むのは初めてであるが,語彙的にも内容的にも小説としては容易な部類に入る.高校の英文法を一通り学んだ後であれば,十分楽しめるだろう.同じような文法事項が繰り返し出てくるので,教育的であると言えなくもない.特に,学校の教科書や長文読解用の問題集ではあまり見かけないであろう,倒置や省略などに詳しくて良い.これらの表現は,高校生が読むような論説文にはあまり登場しないため,彼ら彼女らがこれらの表現に親しむことはなかなか困難なのだ.英語を読むとき,小説はおそらく語彙的にも表現的にも一番多彩で難しい.中高生の読解用教材に小説を使わない理由はおそらくそこにある.この本は高校生に勧めても良い.

ワイルドがなかなかユニークな人生を送ったということは,この本を読んで初めて知った.今流行りのLGBTのはしりみたいな人だったのね.「幸福な王子」のような一見清らかなお話を書く人が,実は私生活が爛れているというのはよくあるみたいだ.ぱっと思いつくだけでも,「狭き門」を書いたジッドとか,「A Christmas Memory」を書いたカポーティとか.作品に全ての清らか成分を吸い上げられちゃって,私生活の方は残り滓しかなかったってことなのかな.なかなか興味深い.

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