英語参考書・問題集紹介

英語については,学年別ではなく内容別に紹介します.

重要度から言うと,文法と単熟語が全体の8割くらいを占めると思ってください.細かいところまで知っている必要はありませんが,これらの初歩が身についていないとお話になりません.逆に言えば,これらの初歩が身についていれば,あとは本を読んだりニュースを聞いたりしながら(もちろん英語のです),楽しみつつ足らないところを補ってゆけるようになります.

英文法

公立学校で与えられるようなワークブックでは英文法はできるようにはなりません.正しい文(標準的な英文法にそった)を大量に読み書きすることが,普通の能力を持った生徒さんにとっては必要なのです(記憶力が特別優れた生徒さんについてはこの限りではありません).この方向性で書かれた英文法の本が実はほとんどなく,おそらく英語を苦手とする人が多い原因はここにあると塾長は考えています.以下に紹介するものは,この方向性を持ったもので,ドリル的に使えるものばかりです.答えを書き込まず,反復練習すれば英文法の基礎がきちんと身につくことでしょう.

New Treasure 文法問題集(1~3)

中高一貫校で用いられているZ会の教科書に準拠した問題集です.一般販売はなされておらず,Amazon,ヤフオク,メルカリなどのぼったくり転売業者から定価の3倍くらいで買う必要があります.1,2が中学範囲プラスα,3が高校初年級くらいで,あまり細かいところまではやりませんが,解説もしっかりしていて,練習量もまずまずです.本屋の棚には溢れるほど英文法の問題集があるのに,この方向性のドリルがほとんどないというのは解せません.棚いっぱいにゴミが詰まっているようにしか見えません.公立学校に通うのが学習環境的にリスクであることを痛感します.

数研の中高一貫校用の教科書や問題集が一般販売されていることを考えると,このシリーズも一般販売してくれていいのではないかと切に思います.

ユメブン(0,1)

しつこく同じ型を練習させる問題集で,New Treasure に近いものがあります.ただ,様々な音読を組み合わせて取り組むことになっているため,よりスパルタな感じです.

マーフィー英文法(初級・中級・上級)

これもしつこく練習させる問題集です.文法事項の説明の仕方が日本のものと少し異なるのが面白いです.原書も邦訳も両方あります.高校生なら原書で読んだ方が練習になるかもしれません.配列が日本の文法書とは異なること,読み書きよりは話すことを重点においているので,小説を読んだりニュース記事を読んだりするにはちょっと向いていないところが入学試験には合わないかもしれません.

以上のようなドリル型の問題集で初歩を身につけたら,あとは好きな題材に取り組めば良いでしょう.本を読むもよし,ニュースを読んだり聞いたりするもよし.そのなかで,上記レベルの本でやったことがないような構文などがでてきたら,本格的な(なんでも書いてあるような)文法書を辞書的に使うようにします.もちろん,どこに何が書いてあるのかがわからなければ辞書的に使うことは不可能ですから,一度はさらっと一通り読んでおく必要があるでしょう.

江川泰一郎「英文法解説」

綿貫陽他「ロイヤル英文法」

Swan「Practical English Usage」

McCarthy「Cambridge Grammar of English」

これらは(そして他の同じくらい分厚い英文法書は),我々が日常的に触れる英語についてほぼすべて解説されています.ある程度以上の大学を目指す高校生や,小説を原書で楽しみたいような方は少なくとも一冊このような本を手元に置いておくことをおすすめします.

英単語

単語や熟語を覚えるために大切なことは,覚えたと思った単語を何度も覚え直すことです.我々の脳味噌はそれほど優秀ではありません.忘れることを前提に,しかし絶対に忘れないように,暗記計画を作らなくてはならないのです.よく「書いて覚えるのですか」「聞いて覚えるのですか」「短文で覚えるのですか」「長文で覚えるのですか」という質問をされますが,塾長の経験的にはどれでも大丈夫です.共通しているのは,何度も何度もエンドレスに覚え直すことと,英語→日本語,日本語→英語のチェック(というか簡易テスト)をやり続けることです.自前の単語ノートを作ってもよいですし,市販の単語帳を購入しても良いでしょう.あれこれ手を出さず,一つのものに集中することです.また,本を読んでいればこれまで知らなかった用法が出てくることもあります.市販のものであろうと自前のものであろうと,その都度新たな用法を書き込んでゆき,知識を積み上げてゆくことが必要です.もちろん,長文を読んだり模試の問題を解いたりしながら知らない単語を見つけた時は,それも全部覚えてゆくようにしなくてはなりません.したがって,市販の単語帳をメインに使う場合も,自前の単語ノートやカードのようなものは使わざるを得ないでしょう.CDを用いての発音記号の確認,発音練習もやって当然のことです.

速読速聴英単語シリーズ(増進会出版社)

長文を読みながら単語を入れていくタイプのものです.何種類か出ているので,自分のレベルに合ったものを選ぶと良いでしょう.

テーマ別英単語ACADEMICシリーズ(増進会出版)

受験参考書コーナーにはないことの方が多いです。英検とかTOEIC などを受験する人たちのいる英語コーナーに置いてあります。英単語、と書いてありますが、非常に興味深い、知的な長文に取り組む中で単語を覚えるという趣向です。単語を覚え、長文の読解もでき、和訳の練習もできます。音声CDも付いていますので、精読が終わったら音読練習やリピーティング、シャドウィングなどもしましょう。また、それぞれの長文の背景となる知識についての薀蓄もあって、本当に素晴らしいです。初級、中級、上級それぞれについて自然科学編と社会科学編があります。必要なもの、興味のあるものから手にとってみれば良いでしょう。こんな素晴らしい本があるのに、受験生は相変わらずしょうもないお受験参考書や問題集を使ってるわけです。アホらしい。

究極の英単語(1~4)(アルク出版)

上の二つは長文で覚えるタイプでしたが,これは短文と単語そのもので覚えるタイプのものです.CDは別売りで結構高いです.スマホやタブレット用のアプリも出ています.なかなか優秀なアプリですが,これまた金がかかります.入試用というわけではないので,基本単語についての語義や用法は全然足りません.適宜書き込んで自力パワーUPをしなくてはなりません.ただ,単語の重複なしに12000語まで(Vol.4までやれば)載っているのは現時点ではこの本だけです.単語の重複なしという縛りのため,例文はかなり不自然で笑えるものもありますが,まあ許してやりましょう.

長文読解

大切なのは,精読と多読の区別をきちんとつけることです.精読においては,文構造や語法などの分析をこれ以上無理というところまで突き詰めるようにします.上に紹介した何でも書いてある文法書なども使用しながら,曖昧なところがない,と言えるまできっちりとやります.もちろん,知らない単語や言い回しはその都度きちんと調べ,何かに記録して定期的に覚え直すようにします.精読においては,最終的に全てが頭に残るような方法で学ぶ必要があります.学校や石原学舎で取り扱うのはもっぱらこの精読の方です.

多読の方は細かいことには気を配らず,物語や論説を楽しみます.英語で情報を得ることを主眼にしましょう.お分かりかと思いますが,日本語で物語や論説を楽しめない場合は英語でも難しいです.日本語ができないなら,英語は多分一定以上にできるようにはなりません.

ちなみに,論説に関しては,最近はネットでいくらでも無料記事が読めます.BBC,CNN,Guardian,Time,Scientific American などの一流誌が無料記事をネットに掲載しています.スマホアプリにも同じようなものがあります.使えそうなものを自分で探しましょう.これらには音声がついているものもあるので,リスニングの練習(ディクテーションやリピーティングやシャドウィングなど)にも使えます.これらのものを毎日読んだり聞いたりすることを習慣にすると英語が身近になります.小説などはニュースやノンフィクションなどよりは語彙が難しかったり言い回しが難しかったりするので,英語の先生にどのくらいの本なら読めそうか聞いてから購入すればいいでしょう.最近はAmazon で英語の本はほとんどどんなものでも入手できます.

ネットが発達したおかげで,語学学習は20世紀の頃に比べるとはるかに環境が良くなりました.この環境で語学が伸びないと言うのなら,それは学習者の責任です.もっと頭を使いましょう.

リスニング

長文読解のところで紹介したネタがそのまま使えます.海外ニュースのポッドキャストとかなら,再生スピードも変えられますし,いくらでも工夫ができます.長文読解もそうなのですが,入学試験用の練習はぬるすぎるのではないかと塾長は考えています.BBCとかCNNを日頃聴いていれば,共通試験の英語リスニングは止まって聞こえるはずですし,TOEICや英検1級のリスニング教材で練習していれば,東大入試のリスニングも止まって聞こえます(東大の場合は,聞きながら覚えたり考えたりするところもありますが).せっかく高地トレーニング的なものが簡単に手に入る環境にあるのですから,それを利用しない手はないでしょう.中高生の皆様の努力と工夫を期待します.

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