現代ロシアの軍事戦略
小泉悠「現代ロシアの軍事戦略」読了
外国のことなんか全然興味がなく,軍事についてはもっともっと興味がなかったのであるが,昨今の世界情勢に鑑みて,最低限の知識を入れておこうと読み始めたのであった.書かれたのはちょうど一年ほど前のことで,できたてほやほや(書きたてほやほや)やで.
現代ロシア,というタイトルからも想像がつくように,基本的にはソ連崩壊後から現在までのロシア軍についての記述である.ソ連軍についての記述ももちろんあるが,それはあくまでも現代ロシア軍との比較としてのものである.ソ連崩壊後のロシアのほとんどがプーチン時代であるが,プーチンの政治そのものよりは,ロシア軍が西側と対決する際にどのような戦略をとってきたか,今後どのような戦略をとる可能性があるか,ということを,ロシアの公式文書や西側からの情報をからめて議論している.著者自身軍事オタクであることを認めているように,軍事や兵器についての結構マニアックな(素人から見れば)記述が多く,そういうところは適宜脳味噌を空にして読み進めたりした.西側に比べて最新鋭兵器に劣るロシアが,どのようにして弱者としての戦いを遂行しようとしているのかが朧げながら見えてきた気がする.
それにしても,限りある人的リソースを軍事や政治などという愚か者のための仕事にさかねばならぬというのは本当に馬鹿馬鹿しい.我々人類は「我は何者ぞ」という問いを抱くことを許された,地球上で数少ない生物である.そのような知性を獲得した生物の最大の目標は,我々のよってきたるところ,世界そのものについての何らかの知見を得ることなのではないか.いつまでも未開部族同士の闘争に明け暮れているのは怠慢ではないのか.