速読

毎年のように,複数の生徒さんたちから「テストの時間が足らん」という相談を受ける.昨今の入試問題は長文化が著しいので,素早く正確に問題文を読む能力は確かに必要であるようだ.しかし,どうやったら素早く正確に読めるようになるのか,ということに関して塾長は方法論を持っていない.もちろん,長文問題では設問を先に読んで,本文は関連のあるところだけ飛ばし読みすればいいんですよ,というのはアドバイスとしてありうるが,その程度のことはみんなやっているだろうし,そもそも飛ばし読みをする能力をどうやってつければいいのかがわからない.

飛ばし読みのような試験対策用インチキではなく,もっと本質的な意味で速読ができるようになるにはどうしたらいいか,というのもよくわからない.日本語を速く読めない人が英語も速く読めないのは当然であるが,日本語が速く読める人が必ずしも正確に読めているわけではないし,本をたくさん読んでいる人が必ずしも読むのが速いとも言えないのである.要するに,塾長が見たことのある生徒さんたちの日本語読解力(そしてそれに比例するであろう英語読解力)に,ほぼ何のパターンも見つからないため,何をどうしたら良いのかわからんのだ.これまでの生徒さんたちの例でなんとなくわかっているのは,高校に入った時点から日本語の読解力と読解スピードがぐっと上がることはない(少なくとも塾長はそういう生徒さんをみたことがない)ということ.これは当然と言えば当然で,限界逓減の法則の単純な応用と言えるだろう.すなわち,日本語は我々がもっとも長期間にわたって毎日訓練してきた(してきているべき)ものであり,高校生になる頃には基本的な能力は完全に頭打ちになっているということ.追加できるとすれば,漢字や文学的表現のレパートリーを増やし,日本語の色彩と解像度を上げることくらいだろうか.高校生の生徒さんたちにはあまり希望のない話になってしまったが,少なくとも塾長はそんな印象を持っている.もしかしたら,良い学習法や良い先生がいて,塾長が見ているような壁を打ち壊すことが可能であるのかもしれないけど.

ただ,日本語(あるいは英語)プロパーの能力としての読解力と読解スピードは急上昇させることが難しいかもしれないが,背景知識をたくさん持っていることで,読解の心理的障壁を低くし,結果として見かけの読解力や読解スピードを向上させることは可能だ.その意味で,様々な分野の本を興味関心を持ち面白がってたくさん読む,ということには意味があると思う.

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